ホメオパシーのエビデンス・その1

『①「ホメオパシーは脳腫瘍のがん細胞を殺し、正常な抹消リンパ球を増殖させる;脳腫瘍の 新治療」 』


 →英語版PDF(259kb) 

アメリカ国立がん研究所、ベストケースシリーズレポート
ナンバー20:69-74、2008 Prasanta Banerji, Donald R Campbell

 アメリカ国立がん研究所では、ホメオパシーが脳腫瘍の治療に有効であることを認め、
昨年ベストケースシリーズとして発表しています。

http://www.jphma.org/fukyu/overseas_090827_cancer.html

とある。英語版PDF(http://www.jphma.org/topics/topics_img/cancer.pdf)を開くと

Cancer patients treated with the Banerji protocols utilising homoeopathic medicine: A Best Case Series Program of the National Cancer Institute USA

とある。なるほど。雑誌名は

ONCOLOGY REPORTS 20: 69-74, 2008

あれっ、アメリカ国立がん研究所、ベストケースシリーズレポート』じゃないぞ…。ONCOLOGY REPORTSとは、調べるとSpandidos Publications Ltd. の出版する商業医学誌であり、アメリカ国立がん研究所とは何の関係もない。論文の閲覧には課金が必要である(通常、公的機関の発行する科学雑誌は課金はされない。もちろん例外はあるが)。

http://www.spandidos-publications.com/or/

さらに見てみる。JPHMAは『ベストケースシリーズレポート』と言っているが、論文のタイトルは『A Best Case Series Program』である。つまり『ベストケースシリーズのプログラム』であって『ベストケースシリーズのレポート』ではない。ではこのプログラムとは何であるか。アメリカ国立がん研究所のHPを見ると、

http://www.cancer.gov/cam/bestcase_intro.html

NCI Best Case Series Program

The National Cancer Institute (NCI) is committed to finding innovative, promising treatments for people with cancer. The NCI’s Office of Cancer Complementary and Alternative Medicine OCCAM) coordinates the Institute’s research program in complementary and alternative medicine (CAM). Since 1991, the NCI has had a process for evaluating data from CAM practitioners that involves the same rigorous scientific methods employed in evaluating treatment responses with conventional medicine. This process, called the NCI Best Case Series (BCS) Program, provides an independent review of medical records and medical imaging from patients treated with unconventional cancer therapies.

Through this program, staff from the OCCAM work with CAM practitioners to identify appropriate, well-documented cases. The primary goal of this program is to obtain and review sufficient information to determine if NCI-initiated research on a specific intervention is warranted.

とある。私が翻訳すると恣意性を疑われるので、インフォーシーク翻訳さんに自動翻訳してもらうと

国立癌研究所(NCI)は、がん患者の革新的な、有望な治療を発見することを約束します。補完的なガンと代替医療OCCAMのNCIのオフィス)、補完的で代わりの薬(カム)で、研究所の研究プログラムを調整します。1991年以降、NCIは従来の医療で処置反応を評価する際に使用される同じ厳しい科学的研究法を含むCAM開業医からデータを評価する方法を持ちました。このプロセス(NCIベスト・ケースSeries(BCS)Programと呼ばれている)は、型にはまらないガン・セラピーで治療される患者から、医療記録と医学画像の独立したチェックを提供します。

このプログラムによって、OCCAMからのスタッフは、適切な、文書で十分に裏付けられた訴訟を確認するために、CAM開業医と働きます。このプログラムの主なゴールは、特定の干渉のNCIを始められた研究が正当化されるかどうか決定するために、十分な情報を得ることになっていて、概説することになっています。

となる。どうやらこのプログラムは、代替医療クリニックでがん治療を受けて有効とされた患者の症例について、そのカルテや画像から、研究論文に使用するに耐える症例であるかどうかを、NCIから派遣された第三者が評価するシステムのようである。

実は日本の厚労省も、これとほとんど同じプログラムを動かしている。

http://www.shikoku-cc.go.jp/kranke/cam/research/index.html

がんの代替医療における有効症例の調査研究

 厚生労働省がん研究助成金「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班では、健康食品などをはじめとした民間療法(以下、「代替医療(だいたいいりょう)」と言います)に関して、安全性と有効性を検証する研究に取り組んでいます。 現在、情報技術の発達によって、がん患者さんやその家族の方々は、がんの代替医療に関する情報を、大量に目にしたり耳にしたりしています。しかし、その情報の信憑性や正確性については不確実であるのが現状です。
 そこで、今回、それらの情報について第三者的立場で厳密に審査する取り組みを研究班の研究として計画しました。今回の取り組みは、診療録等診療情報を収集・集計して行う観察研究(臨床の場における疫学研究)となります。
 代替医療の研究に関して積極的に取り組んでいる米国においても、国立がん研究所が今回研究班が行う取り組みと同様のBest Case Series Programに取り組んでいます(http://www.cancer.gov/cam/bestcase_intro.html)。
 先生方におかれましては、日々の診療でお忙しいとは思いますが、本研究の主旨をご理解頂き、代替医療が有効であったと推測される患者さんの医療情報の提供にご協力を賜りたくお願い申し上げます。なお、本研究は倫理委員会の審査を受け承認を得ています。

注目すべきところはこのページの一番最後、

 なお、当該研究において審査の対象となったことが、がん治療としての効果を認めたことを意味しているわけではありません。その治療法の効果を評価するためには、よくデザインされた臨床試験でなされる必要があり、当該研究で集められた情報は、今後の臨床試験実施に向けた基礎資料としての位置づけとなります。

実はアメリカ国立がん研究所のHPにも

Does the NCI Best Case Series Program evaluate CAM therapies for their effectiveness as a cancer treatment?

No. An evaluation of a treatment's effectiveness is generally done by analyzing the results of well-designed and well-conducted clinical trials. Rather, the goal of the NCI Best Case Series Program is to provide an assessment of the quality of available data and its utility as support for the justification of NCI-initiated research.

とある。アメリカ国立がん研究所は、ホメオパシーをはじめとする代替医療が有効とされた症例の科学的評価はするが、『代替医療が有効であるかどうかは、よくデザインされ指導された臨床試験によって評価されるのであり、がん治療としての効果は評価していない』としている。だとすれば

 アメリカ国立がん研究所では、ホメオパシーが脳腫瘍の治療に有効であることを認め、
昨年ベストケースシリーズとして発表しています。

という文言は、何を根拠に書かれたものなのであろうか。

考えてみたらまだ内容にすら入っていない。『末梢』を『抹消』と書き間違えていることに突っ込むことも忘れていた。

論文の内容についてはまた次回。

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